これは確か本屋さんで見かけて気になった本だったと思います。
古内 一絵 さんの「百年の子」。
- 価格: 1980 円
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古内さんの本は初めて読みました。
淡々と、簡潔に、でも端折らず丁寧に語られている感じがして、とても読みやすいし何かに偏ったり引っ張られたりすることなくフラットに読み進められる感じが心地よかったです。
ごく最近の令和と、昭和初期の戦争から戦後の時代が、ある出版社で働く女性とその母、祖母の仕事と記憶を通して繋がっていく、実在する会社や作家さんをモデルにした事実も混ぜ込んだリアリティに富んだ物語でした。
戦争と言えば、わたしは歴史の授業と、子供の頃夏休みに見た「はだしのゲン」というアニメの記憶が主でした。
その時代、女性や子供たちが働くこと、学ぶこと、学びのための出版物はどんな扱いを受けていたかを考えたこともなく、戦地へ赴いた青年たちとはまた別の辛さや闘いがあったのだと衝撃でした。
まだ戦後80年程度。
その80年で生活や文化は大きく変貌を遂げたけれど、まだまだ変わる、変えるべきものは多く、人間は発展途上なのだと思いました。
あらすじはこんな感じ。
昭和~令和へ壮大なスケールで描く人間賛歌。人類の歴史は百万年。だが、子どもと女性の人権の歴史は、まだ百年に満たない。舞台は、令和と昭和の、とある出版社。コロナ蔓延の社会で、世の中も閉塞感と暗いムードの中、意に沿わない異動でやる気をなくしている明日花(28歳)。そんな折、自分の会社文林館が出版する児童向けの学年誌100年の歴史を調べるうちに、今は認知症になっている祖母が、戦中、学年誌の編集に関わっていたことを知る。世界に例を見ない学年別学年誌百年の歴史は、子ども文化史を映す鏡でもあった。なぜ祖母は、これまでこのことを自分に話してくれなかったのか。その秘密を紐解くうちに、明日花は、子どもの人権、文化、心と真剣に対峙し格闘する、先人たちの姿を発見してゆくことになる。子どもの人権を真剣に考える大人たちの軌跡を縦糸に、母親と子どもの絆を横糸に、物語は様々な思いを織り込んで、この先の未来への切なる願いを映し出す。戦争、抗争、虐待……。繰り返される悪しき循環に風穴をあけるため、今、私たちになにができるのか。いまの時代にこそ読むべき、壮大な人間賛歌です。
小説の中で登場する実在の作家さんの実在の本も気になってしまい、近々それを読んでみようと思います。