図書館で予約していた本を読みました。
普段恋愛小説はあまり読まないわたしがタイトルに ”恋人たち” と付くこの本をなぜ予約したのか覚えがありませんでしたが、いつ予約したかも覚えていないのでけっこう待ったことは間違いないと思います。
一色さゆり さんの、「カンヴァスの恋人たち」。
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一色さゆりさんは存じ上げず、今回初めて読みました。
プロの小説家の方に対してこういう表現は誉め言葉にならないかもしれませんが、とても 読みやすい 文章でスラスラと進みました。
(読みやすいというより、自分好みの文体なのかもしれません。)
タイトルに”恋人たち”とありますが恋愛要素は薄く、それよりも 生き方 とか 人生観 とか、自分に重ね合わせて 共感 したり 考えさせられる 小説でした。
主人公の女性は三十代前半で未婚、郊外の美術館で非正規雇用の学芸員をしています。
大学時代から付き合っている恋人は東京で正規職員として同じく学芸員をしていて、年齢的に結婚を考えるも、女性は担当している仕事を全うしたいことや東京での正規雇用は難しいことから一歩踏み出せずにいます。
そんな折、健康診断で彼女に子宮内膜症が見つかる。
女性には珍しくない病気ではあるものの、不妊にも繋がるリスクがあり、悪化しないようとにかく投薬治療を開始しなければならない。
わたしも、彼女と同じ頃に同じ病気が見つかり今も投薬治療中なので、小説の中の彼女の気持ちがとてもよくわかりました。
妊娠すれば自然治癒することが多い病気。
すぐに生死に関わるようなことはまずないけれど、放置すれば癌化する可能性もある病気。
妊娠すれば治ることが多いと当時わたしも医師に言われました。
治療のための投薬は避妊にもなるので、「妊娠を望むなら投薬治療はストップしますから言ってくださいね」とも。
でも妊娠するということは、結婚することとイコールで、妊娠することができた場合はその先に少なくとも数年間は子育てのみに没頭するしかない期間が待っています。
何に変えても子供が欲しいのか、子供が欲しいからこの人と結婚するのか、そうして望んでも妊娠に至らなかった時は。
「まだ今じゃない」と思っても、タイムリミットのあること。
そのタイムリミットも個人差があり明確でなく、迷いのある人にとっては決断が難しい。
絶対に相手はこの人がいいし、絶対に子供が欲しい、そう確固たる意志がある人なら迷わず結婚して妊活すれば良いと思いますが、病気をきっかけに急いで決断を迫られた時、主人公のように迷ってしまうのが普通じゃないかと思います。
彼女にとって、すぐに結婚・妊娠を選択できないほど仕事が大切で、その仕事で出会った高齢の女性画家や彼女の作品、生き方から「自分のままで」良いんだと悟ります。
それを悟れた彼女の強さや清々しさが気持ち良く、前向きになれる一冊でした。
一色さゆりさんをググったらミステリー小説も書かれる方のようなので、また別の本も読んでみたいと思います。