今回の本はなんで選んだんだったか記憶になかったのですが、図書館から「予約の本がご用意できました」のメールが届いたので借りに行って読みました。
青山七恵 さんの「前の家族」です。
- 価格: 1980 円
- 楽天で詳細を見る
後から確認したら今年の7月発刊の書籍だったので、きっと本屋さんでたまたま見かけて気になって予約したものと思います。
恐らくこの ↓ あらすじか何かが紹介されていたか、帯になっていたんじゃないかと。
その物件、購入して大丈夫ですか?
賃貸に住み家賃を払い続けるのか、ローンを組んで終の棲家となるマンションを購入するのか、決断一つで人生の転機が訪れる。
「借金をして家を買おう」。37歳、独身、小説家・猪瀬藍は、中古マンションの購入を決意。夫婦と娘2人の4人家族が暮らす物件を内見し、理想的なマンションに出会えたと契約を結ぶことに。新居での新生活に心躍らす藍。しかし、その先に思いもがけない展開が待ち受けていた・・・・・。マンション購入はその物件だけではなく周りの環境まるごとが自分の世界になるということ。藍の身に衝撃の結末が訪れる。
果たして、その物件に手を出してはいけなかったのか・・・・・芥川賞作家が挑む異色のマイホームミステリー。
わたしも30代でローンを組んでマンションを購入した独身女なので、主人公と重なる部分に気になるものがあったのと、”芥川賞作家” に惹かれたのかもしれません。
青山さんの本は今回初めて読んだのですが、予約したこともすっかり忘れていたので、読み始めてしばらくは エッセイ だと思っていました。
つまり青山さんご自身の体験が描かれているものと。
そのくらい、最初のうちは リアリティ があり、30代独身で突然自分の家、終の棲家が欲しくなったところから実際に買うまでの流れなど、自分の経験と重ねて「わかるわかる」と共感していました。
私自身は新築のマンションを購入したのですが、主人公(主人公と著者の名前が違う時点でエッセイじゃないと気づけよという感じなのですが、著者の名前も確認せずに読み始めていました)が購入したのは中古のマンション。
検討の段階ではまだそこに住んでいる家族が居て、その家族が近くに一戸建てを購入することになり売りに出されたマンションでした。
家族立合いのもとにマンションを内見して、一人暮らしには広すぎるけれども諸々の条件が一致して購入にいたった主人公。
無事に引っ越しもリフォームも終え、階下の親子とも親しくなり、自分好みの家具やインテリアに囲まれて ”自分の家” での暮らしが始まった。
そこへ訪ねてきた ”前の家族”・・・マンションの売り主である家族の、娘たち。
半ば無理やりに主人公の家となった元自分たちの家に上がり込み、それを繰り返してついに母親まで家に来るようになり、”前の家族”との奇妙な関係ができていくという物語です。
いかんせんエッセイだと思いながら読み進めていたので、一見すると仲良しな家族+独身女の不思議な関係というほのぼのともした雰囲気と、だんだんそこはかとなく感じられる 違和感、気持ち悪さ との不協和音に怖さを感じました。
これは、後から確認したあらすじの通り、ミステリー ですね。
「んなことあるかい」という感想もあるものの、この小説の”前の家族”のように親切や親しみの仮面をつけてするりと我を押し通すような人は世の中居るよなぁと、ぶるり震えるものがありました。
青山さんは「ひとり日和」という小説で芥川賞を受賞されたようなので、それも今度読んでみたいと思いました。